ニコ技・深圳観察会に参加した

2014年12月8~12日に中国・深圳で開催された、ニコ技・深圳観察会に参加してきた。

この旅に参加した目的はいくつもあるけれど、一番大きな理由は、あのSeeedStudioを、あのFusionPCBの工場をナマで見られるチャンスなんて滅多にないだろ?という思いだ。

それ以外にも、

  • 街の中心街に、上から下まで電子部品屋のビルが林立してるって?それは絶対見てみたいでしょ!
  • いつもやってる設計ワークフロー↓よりも洗練された、速くて安いフローがあるのか?

    Eagleで設計→DigiKeyで調達→Fusionで基板→手半田で試作→国内で自動実装

  • 日本の1/3の値段でデジタルガジェットを作る中国の工場の秘密は何?
  • Maker活動の悩みのタネ「樹脂の射出成形」、安価にできる魔法はないか?
  • ぜんぜん知らない「シードアクセラレータ」って、いったいなに?

などなど、おもしろそうなものをイッキに見て・感じて・学べる、すごいチャンスだと考えたから。

結果として、これらの興味への答えを全部持って帰ることができた。 参加して大正解だった。企画してくださった高須さんに感謝してもしきれない。

以下、長くなるので、先に結論を。

Makerから見た深圳の特性

  • 深圳は「量産工場」と「Maker文化の集積地」の2つの顔を併せ持つ希有な街

    • どちらか一方だけなら他にもある
    • 日本なら、諏訪や東大阪が前者、アキバが後者に相当するのかな
  • 「電子部品商社の店頭販売」の存在が、効率の良いアイデア具現化を支える

    • 深圳周辺に膨大な量産工場が集積しているので、量産向けの部品流通が豊富
    • 小ロット生産者がおこぼれ的にサンプル品を売ってもらえるチャンスがある
  • 深圳はMakerを惹きつける、ある種のアイコンとして機能している

    • Maker活動の試作品を「商用クオリティ」に高めるためのしくみは、確かに深圳にある
    • しかし、それは深圳の街が持つ機能というよりも、深圳に集まったコミュニティの力による要素が大きい
  • 華強北の商社で高品質な正規部品を安定的に入手できるかというと、大いに疑問
    • 話題性で売り切る短寿命ガジェットを狙うならそれでも良い
    • そう考えると、中華ガジェットってそういうスタイルばかりだよな

深圳の街全般への印象

  • 明日からでも住めそう
    • たいへん猥雑な街ではあるが、治安の不安は感じない
    • 夜の一人歩きも不安はない
    • こんな治安がいいなら、一眼レフ持って行けば良かった
  • 高速道路や地下鉄など、公共交通網はよく整備されている
    • 都心の一部を除けば、極端な交通渋滞もない
    • 地下鉄はきわめて安価で清潔 運転頻度も高く、立派なホームドアもある

深圳周辺の工場を見学して

  • 工場が独自に改善サイクルを回す体制ができていない
    • 低賃金時代に教わったやりかたのまま、工程を改善できずに賃金だけ上昇したため、地域全体の費用対効果が低下して競争力が削がれつつある印象
  • 日本人やアメリカ人が関わった工場と、そうでないローカル工場では、見た目が大きく異なる
    • 床を作業スペースとして扱うかどうか、というデジタルなレベルで違う
  • 省力化や自動化は、ほんとにほんとに最低限
    • まだまだ人海戦術主体・高不良率体制
    • 自動化を進めたがる日本の工場に慣れているので、なおさら異様な光景に見える
  • 品質や安全衛生への取組みは特に遅れている 行政指導が有効に機能していない
    • 今回の見学で最もショックだったことの一つ
    • ケミカルへの暴露や怪我への対策はほぼなされていない
    • 無意味な行政指導を回避するための官吏対応に、時間や費用を割かれる(ジェネシス/藤岡さん)

私のMaker活動へ深圳を活用できそうか

  • いまの私の活動範囲では、うまく活用できなさそう
    • 最低、年1000台以上生産しないと、いろいろな意味でペイしない
    • 中国を大消費地とみれば地の利があるが、輸出するならメリットも希薄に
    • いっそのこと移住するのが最も有効活用できる道かも
  • 安価に射出成形を行う魔法は深圳にも存在しない
    • これは訪問の主目的だったので残念
  • ロットが小さく、品質にうるさい日本からの注文は「嫌われている」
    • 車やスマホなど、日本からの注文とは桁違いのロット
    • いま深圳で試作をやってくれるところは数えるほどしかない(藤岡さん)
  • アルバイトが安価・容易に雇えるため、小規模量産はバイトの手作りで対応できる
    • 「バイトの手作り生産」が、私が深圳を活用するとすれば唯一の解と思う
    • Dangerous Prototyping社が実際に行っている
    • バイトの給与はフルタイムで月4~5万円程度。
    • ただし、キビキビ働いている人は皆無
    • 離職率は「平均で年100%以上。8ヶ月持つかどうか」(日技城/西村さん)

参加者の方々との交流

  • みんな初対面なのに「深圳」「Maker」のキーワードで親密になれた
  • そうだよね、それいいよねって思える言葉が続々飛び交う夕食会に参加できた
    • 「Makerは基板で自己紹介するのが一番」(稲見さん)→全くその通り、準備しておらず反省
    • 「QFNは手で付きますよ」「自宅用にリフロー炉買いました」(五嶋さん)→QFN、チャレンジしてみます。でもリフロー炉は買えないなぁ…
    • トラ技に書いたらいいじゃないですか」(秋田さん)→今年は雑誌デビュー、チャレンジしてみます


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